夏休みの終わりが近づいたころ、子どもが「学校へ行きたくない」と言い出すことがあります。前日まで元気だったのに急に泣く、朝になるとお腹や頭が痛いと言う、持ち物の準備を避ける。保護者は「休ませてよいのか」「背中を押すべきか」と迷うでしょう。
ここで大切なのは、気合いや説得だけで登校させようとしないことです。「行きたくない」は、友人関係、勉強、先生との関係、教室の音や暑さ、生活リズム、離れる不安など、まだ言葉になっていない負担を知らせる合図かもしれません。本人にも理由が一つに絞れないことがあります。
この記事では、夏休み明けに必ず登校できる方法ではなく、子どもの負担を小さく分け、家庭と学校で相談できる形にする方法を紹介します。安全を最優先にしながら、その子に合う次の一歩を一緒に探していきましょう。
「行きたくない」の背景を、決めつけずに分ける
理由を一度に説明できなくても不自然ではない
「どうして行きたくないの?」と尋ねても、「分からない」と返ってくることがあります。これは隠しているとは限りません。教室へ入る緊張、宿題への焦り、友達に会う気まずさ、朝の眠さなどが重なり、本人も整理できていない場合があります。
答えを急がせるより、「朝起きるところ」「家を出るところ」「教室へ入るところ」「休み時間」のように場面を分けます。「どこが一番しんどそう?」「言葉にしにくければ、今は話さなくてもいいよ」と聞けば、子どもは答えない選択もできます。
親が予想を伝える場合も、「友達が嫌なんでしょう」と決めず、「友達のこと、勉強のこと、朝起きること、この中に近いものはある?」と候補にします。子どもの返答が予想と違ったら、目の前の言葉を優先してください。
感情・身体・行動・環境を別々に見る
学校への負担は、言葉だけでなく身体や行動にも表れます。感情は「不安」「怒り」「恥ずかしさ」、身体は腹痛、頭痛、吐き気、眠れないこと、行動は準備を避ける、黙る、泣くこと、環境は人間関係、授業、音、暑さ、予定変更などに分けて記録します。
たとえば「登校を嫌がった」だけでなく、「始業式の話をした夜は寝つくまで時間がかかり、朝に腹痛を訴えた。休日は痛みがなかった」と残します。診断するためではなく、いつ、どこで負担が増えるかを学校や相談先へ具体的に伝えるための記録です。
不安と学校への行きにくさには関連が報告されていますが、すべての欠席や行き渋りを不安だけで説明できるわけではありません。11研究を整理したレビューでも関連が示される一方、長期的な研究や欠席全般についての質の高い証拠は限られていました(Finning et al., 2019)。一つの原因に決めず、多面的に見る必要があります。
「怠け」「親のせい」「星のせい」にしない
登校できない状態を「怠け」と決めると、子どもは困りごとを話しにくくなります。同時に、保護者が「育て方が悪かった」と自分だけを責めても、必要な支援を探しにくくなります。本人、家庭、学校の誰か一人を原因にせず、変えられる条件を探します。
占星術から、安心しやすい環境や変化への反応を考えることはできますが、学校へ行けない理由や心理状態は星から判定できません。子どもの月星座とはで紹介しているように、星の解釈は観察の問いにとどめ、登校の判断は本人の状態と現実の安全を優先します。
夏休み中から、再開の負担を小さくする
生活リズムは一日で戻そうとしない
始業日前夜だけ早く寝かせても、すぐ眠れるとは限りません。可能なら始業日の少し前から、起床時刻を学校のある日に近づけます。就寝時刻だけを管理するより、朝にカーテンを開ける、朝食をとる、日中に身体を動かすなど、一日の支点を少数決めます。厚生労働省の睡眠情報でも、朝日と朝食には体内時計を調整する働きがあると案内されています(厚生労働省「あなたの睡眠の質 大丈夫ですか?」)。
すべてを完璧に戻す必要はありません。寝坊した日に強く叱ると、生活リズムの話と登校への不安が結びつくことがあります。「今日はここまで戻せた」「明日は起きたら窓を開けよう」と、できた部分と次の一歩を具体的にします。
強い不眠や昼夜逆転が続く場合、生活習慣だけで解決しようとせず、学校、自治体の相談窓口、かかりつけ医などへ相談してください。
学校を思い出す練習は、小さく選べる形にする
登校への緊張がある子に、突然「明日から普通に行こう」と求めると、目標が大きすぎる場合があります。制服や持ち物を見る、時間割を確認する、通学路を家族と歩く、校門の近くまで行く、担任と短時間話すなど、負担の小さい段階を学校と相談します。
本人へは「全部やる?」ではなく、「今日は持ち物を見るだけと、通学路を少し歩くのはどちらがよさそう?」と、親が受け入れられる範囲で選択肢を渡します。途中で苦しくなったときに戻れることも先に伝えます。
学校出席の問題を対象とした2025年のレビューでは、認知行動的な支援は対照群と比べて出席に中程度の効果を示しましたが、研究方法のばらつきやバイアスなどの限界もありました(Jakobsen et al., 2025)。家庭で無理に専門的な方法を再現するのではなく、「目標を小さくする」という考え方を学校や専門家との支援に活かします。
始業日前に、学校へ共有する
欠席が続いてからでなくても、担任や養護教諭、スクールカウンセラーへ相談できます。家庭と学校では見える姿が異なるため、厚生労働省も、様子が気になるときは家庭・学校・医療機関が情報を共有しながら支えることを案内しています(厚生労働省「ご家族と学校の連携、相談の仕方」)。
連絡するときは、①いつから、②どんな場面で、③身体や睡眠の変化、④本人が話したこと、⑤家庭で試したこと、⑥相談したいこと、の順に短くまとめます。「登校させてください」と丸ごと任せるのではなく、「朝、教室へ直接入るのが難しいようです。別室で先生と会う選択はありますか」と具体的に尋ねます。
学校によって利用できる場所や対応は異なります。教室以外の居場所、登校時間、連絡方法など、実際に可能な選択肢を確認しましょう。
「行きたくない」と言われた日の関わり方
最初は説得より、話せる状態をつくる
朝に「行きたくない」と言われると、親も仕事や学校への連絡があり焦ります。それでも最初の言葉は、「何を言っているの、行きなさい」より、「行くのがしんどいんだね。今、身体でつらいところはある?」の方が状態を確認できます。
気持ちを受け止めることは、すぐ欠席を決めることでも、何でも希望どおりにすることでもありません。「休むかどうかを一緒に考えるために、今の状態を知りたい」と伝えます。親自身が強い不安で言葉が多くなっているなら、まず水を飲む、別の大人へ交代するなど短い間を取ります。
保護者だけを対象とした子どもの不安への介入をまとめた研究では、親が対応を学ぶ支援にも有望な結果が報告されています。ただし研究デザインや内容は多様で、家庭での声かけだけですべて解決できるという意味ではありません(Jewell et al., 2022)。
登校か欠席かの二択にせず、その日の安全を考える
その日の選択には、遅れて行く、校門で先生に会う、保健室や校内の別室を利用する、オンラインで連絡する、休んで翌日の相談を決めるなどがあります。利用できる選択肢は学校へ確認し、子どもの状態に合わせます。
ただし、段階を小さくすることを「今日は校門まで行けたのだから、次は絶対教室」と自動的に進めるルールにはしません。本人の負担、学校で起きていること、支援者の見立てを確認します。文部科学省も、子どもの状況へ配慮しない強引な登校の促しで、本人や保護者を追い詰めないよう示しています(文部科学省「不登校への対応について」)。
休んだ日は罰として楽しみをすべて取り上げるのではなく、安全に過ごし、睡眠や食事を保ち、次に誰へ相談するかを決めます。休むことを長期方針として家庭だけで抱え込まず、学校や専門機関と状況を共有します。
安全に関わる変化は、その日のうちに相談する
「消えたい」「生きていたくない」などの言葉、自分や他者を傷つける行動、いじめや暴力・虐待の訴え、食べたり眠ったりできない状態、激しい身体症状がある場合は、登校の説得より安全確保を優先してください。子どもを一人にせず、学校、医療機関、地域の相談窓口へ早めにつなぎます。切迫した危険がある場合は119番または110番を利用します。
文部科学省は、長期休業明けに相談窓口を改めて知らせ、保護者が把握した子どもの悩みや変化を学校へ積極的に相談するよう求めています(2026年7月3日通知)。「24時間子供SOSダイヤル」は、子どもと保護者が全国から24時間相談できる窓口です。電話番号は 0120-0-78310(なやみ言おう) です(文部科学省)。
学校へ行けることだけを、回復の唯一の目印にしないでください。「つらい」と言えたこと、安心できる大人とつながれたこと、負担を一つ言葉にできたことも大切な前進です。
今日からできることは、始業日の話をする前に、「学校のことで気になることが出てきたら、話す・書く・合図するのどれが伝えやすい?」と聞くことです。答えがなくても、話せる入口を用意しておくことが、親子で作る次の計画になります。
声のかけ方そのものを見直したい場合は、子どもへの声かけが届かないときも参考にしてください。子どもの性格を決めつけずに状況を観察する方法は、子どもの性格が分からないときで紹介しています。
参考文献・公的情報
- Jakobsen S, et al. Cognitive Behavioral Interventions for School Attendance Problems: A Systematic Review and Meta-analysis. Child Psychiatry & Human Development. 2025. DOI: 10.1007/s10578-025-01847-x.
- Finning K, et al. The association between anxiety and poor attendance at school: a systematic review. Child and Adolescent Mental Health. 2019;24(3):205–216. DOI: 10.1111/camh.12322.
- Jewell C, et al. The impact of parent-only interventions on child anxiety: A systematic review and meta-analysis. Journal of Affective Disorders. 2022;309:324–349. DOI: 10.1016/j.jad.2022.04.082.
- 厚生労働省「ご家族と学校の連携、相談の仕方」
- 厚生労働省「寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質 大丈夫ですか?」
- 文部科学省「不登校への対応について」
- 文部科学省「令和8年7月3日児童生徒の自殺予防に係る取組について」
